トランスジェンダーへの美しき誤解【今さら聞けないLGBTの基礎知識】

ゲイ雑誌の編集部に20年在籍、独立後はLGBT系のニュースサイトでライターを務めた、LGBTQ思想に違和感を覚えるゲイ当事者が初の書籍執筆のために「今さら聞けないLGBTの基礎知識」を連続レターで公開する。世に氾濫するLGBTQ思想を啓蒙する書籍とは一線を画する、異なる観点から日本のLGBT問題を誰もが分かりやすく読めるよう解説していく。
冨田いたる 2025.08.13
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2009年ごろ、ゲイ雑誌「G-men」の編集長時代にグラビア撮影の空き時間に遊びで撮ってもらったカット

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性同一性障害を理解する人は多い

※今は「性同一性障害」ではなく「性別不合」「性別違和」というのだ、などLGBTQもしくはトランスジェンダー問題に詳しい人からの批判が出るであろうことは分かっている。しかし、私はLGBTQやトランスジェンダー問題に明るくない人や特に興味を持っていない人に向けて解説するので、ここではあえて多くの人に聞き馴染みのある「性同一性障害」という言葉を使うことをご容赦いただきたい。

***

「性同一性障害」

この言葉を耳にしたことがある日本人は、かなり多いと思う。

そして、「自分が生まれた肉体と、自分か感じている性別が異なっていて苦しんでいる可哀想な人である」というイメージを抱いている人もまた多いだろう。

2003年7月に『性同一性障害特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)』が成立した。

その前年の3月まで半年に渡りTBSテレビで放送された『3年B組金八先生 第6シーズン』では、上戸彩が鶴本直という名前の性同一性障害の生徒役を演じて大きな話題となった。

こうして日本では、2000年代前半に「性同一性障害」という言葉が大きく知られることになった。

『3年B組金八先生』での上戸彩が演じた役の印象が強いせいか、「性同一性障害」については多くの人が下記のように捉えていると思われる。

「性同一性障害」とは、生まれてきた体の性別と、自分が認識する性別が異なっているために苦しんでいる人。

これは決して間違ってはいない。

『性同一性障害特例法』が超党派の議員の働きによって早期に成立したのは、日本国内にはリスクの高い手術(かつては「性転換手術」と呼ばれていたが現在は「性別適合手術」という)を受けてでも”自分が認識する性別”に肉体を合わせないと生きていけない人が一定数存在していたからだ。

そして手術を受け、”自分が認識する性別”に肉体を近づけ、”自分が認識する性別”として生活している人にとっては戸籍が”生まれてきた体の性別”のままであることで不都合が生じていた。

戸籍の問題で生きることに困難を抱えている人を救う目的で、『性同一性障害特例法』が成立したという経緯がある。

『性同一性障害特例法』に定められた条件に該当することで、性同一性障害の当事者は戸籍を変更できるようになった。

『性同一性障害特例法』の成立によって、「性同一性障害」とは、生まれてきた体の性別と、自分が認識する性別が異なっているために苦しんでいる人、という印象が多くの人に定着した。

そしてこのことが2010年代以降に、トランスジェンダーへの美しき誤解を生み出す理由となったのだ。それは、『トランスジェンダー=性同一性障害』であると思い込んでしまったからだ。

かくいう、私も最初は同じ思い込みをしてしまい、それが間違いであると認識するには長い時間がかかった。

そこで私のように長い時間をかけずとも『トランスジェンダー=性同一性障害』の間違いを多くの人に理解してもらうために、間違いの理由を分かりやすく解説していく。

※『性同一性障害特例法(性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律)』の詳細は下記のリンクをクリックして確認してほしい。

トランスジェンダー≠性同一性障害

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